ヒルズゴルフトミーアカデミー主宰中嶋常幸プロにインタビュー
「マスターズで勝つ選手が、トミーアカデミーから出たら最高」
2012年に立ち上がった中嶋常幸主宰のヒルズゴルフトミーアカデミー。
今年は6期生を迎えることになる。2月末に実施された5期生最後の合宿後、中嶋プロにインタビュー。
この10年を振り返ってもらうとともに、今後についての展望を聞いた。
女子だけでなく男児も海外で活躍できる選手を育てたい
▼2012年に立ち上げたトミーアカデミー。この10年間を振り返っていただけますか?
静ヒルズCCのコース改造のお手伝いをしていた時、森ビル前社長の森稔さんと「こんなところで海外に出て活躍できる選手を育てられたらいいね」という話をさせていただいて、「中嶋プロがそういう風に思っているんだったらやりましょう」ということで森稔さんが後押しをしてくれて立ち上がりました。やっぱりすごく思い入れが強いですね。ジュニアを教えるゴルフアカデミーというのは世の中にたくさんありますが、トミーアカデミーでは「世界に出て活躍できる日本人を育てよう」という目標を掲げました。
第1期生の畑岡奈紗が、日本女子オープンをアマチュアで優勝し、その後海外に出て米ツアーで何勝もしています。森稔さんとの約束を果たせたと自分の中では誇りというか自負があります。もちろんずっとサポートしてきてくれている森ビルの応援があってのことなので、すごく僕は恵まれていると思います。
▼この10年間の実績は素晴らしいですね。
海外で優勝できる選手がでてきたからそろそろいいんじゃないかと担当に言ったら、「いや、まだメジャーがあります。そして男子があります」と言われました。まだ、やめられないようです(笑)。
これからの目標としては男子でも海外で優勝できる選手を育てたいですね。10年経っても男子は道半ばですので。一昨年の日本オープンで活躍した河本力とか、昨年の日本ゴルフツアー選手権で上位争いをした杉原大河とか、それなりに少しは匂いが出てきているんですよ。ただ、海外ツアーでの活躍とかを考えるとまだまだそんなもんじゃダメです。
本当のことを言えば、やっぱりマスターズで勝つ選手がアカデミーから出たら最高ですね。夢みたいな話だけどそんな夢がないとやっていても面白くない。日本ツアーで活躍できる選手を育てるくらいだったらなんか夢がちっちゃいですよね。やっぱりマスターズだよ。松山くんのように日本人で優勝できる選手が出てきたんだから。今ははっきりとそういう夢があります。
松山選手のゴルフに向かう姿勢を見習って欲しい
▼松山英樹選手には一度合宿に来ていただきました。松山選手のどんなところを見習って欲しいですか?
ゴルフに向かう姿そのものです。打つ技術というのは個々それぞれ違いがあるから、松山くんのように打てと言ってもそれは無理なんです。でも彼がゴルフに向かう姿勢、それはもう本当に素晴らしいからその姿勢を学んでほしい。例えばスタートが早い時は朝4時から体をアップしていきますが、「あぁ、4時だ。やりたくないけど起きてやんなきゃ」みたいな気持ちを持っていたら世界なんてもう夢のまた夢。朝4時に「よし、今日も頑張っていこう!」ってアップに入っていける子とそうじゃない子の差っていうのはあります。そこを松山くんはずっとやってきているわけで、そういう姿勢を見習ってほしいです。飽くなき探求心、目標の高さ、そして目標を見続ける力、高い目標を設定する力をです。
▼生徒は「中嶋プロが教えてくれることっていうのは他では教われないことが多い」とみんな言います。どんなことを教えているのですか?
教えるにあたって表現力っていうのを大事にしていますし、出し惜しみはしないです。今まで自分が培ってきた、あるいは経験してきたことを言葉にして伝える時に決して出し惜しみをしないですし満遍なく伝えたいと思っています。
若かった20代か30代の頃は、人のことなんか構っていられないよっていう気持ちがありました。また、自分の技術的なことを人にどうやって伝えるの、言葉なんかじゃ伝わるわけないじゃんって思っていましたし、実際にその通りなんです。技術的なことを言葉にして伝える、あるいは手を取り足を取り伝えようとしても現実的には伝わりにくいです。
トミーアカデミーでは、それをどうしたら伝えられるか、いかに近いものとして伝えられるか、いかにリアリティを持って伝えられるかについてはいつも気をつけています。伝えたいことを網羅できる言葉、表現力、そして本当に出し惜しみしないで、「ああ言っておけばよかった、これを伝えておけばよかった」という思いを残さないように気を付けて生徒たちに指導をしています。
強くなるだけでなくゴルフを通して豊かな人間になってほしい
▼今後の目標に関してマスターズで優勝する選手というのもありましたが、それ以外でもトミーアカデミーの生徒に求めるものはありますか?
あります。もちろん強い選手を育てたいというのが強いしメインテーマであるけど、僕の中では第2のテーマがある。今、人間関係とか社会において、人間がなんというか粗悪になっていて、事件を見てもひどい事件ばかりです。子供たちがその狭間で苦しんで、子供同士がいがみあったりとか、そういう社会や人間の劣化みたいなものを感じます。だから、僕が副題として思っているのはゴルフを通して強く優しい人間になってほしいということです。
目標にたどり着かないかもしれないけど、ゴルフをやっていてよかったという場面に必ず巡り合うので、それを大事に生きて欲しいと思います。強くて世界で活躍する人間を育てるのは1番の主題であるけど、2番目の副題はゴルフを通して豊かな人間になってほしいということです。
▼生徒たちに「真似される選手、憧れられる選手になれよ」とおっしゃっていました。
そうだね。だからと言って、自分が聖人君主だとは言わない。やっぱり人間って絶対に完璧な人はいない。欠点もあればたまにキズのところもあるわけだけど、それがあって初めて人間。そのことで卑屈になる必要はないし、だから人間って素晴らしいし、その欠点もあるところにひかれるんじゃない?
▼まもなく第6期が始まります。新しい期に向けて一言いただけますか?
幸いなことにトミーアカデミーの応募者はすごく多いです。どんな逸材がいるか、どんな可能性を秘めた原石が来るか、それが楽しみですね。その原石を磨く
ちょっとしたお手伝いができればいいなと思います。