「打つ技術も大事だが、それを支える体、その両方を統括する心が必要」
「打つ技術も大事だが、それを支える体、その両方を統括する心が必要」
ヒルズゴルフトミーアカデミー主宰・中嶋常幸プロにインタビュー
2012年の開校以来、米国女子ツアーで
活躍する畑岡奈紗選手や、
男子ツアーで2勝を挙げる河本力選手などを
育ててきたヒルズゴルフアカデミー。
主宰する中嶋常幸プロに、これまでの振り返りと
将来に向けた抱負を聞きました。
中嶋常幸(なかじまつねゆき)
ツアー48勝。賞金王に4度輝いた日本を代表する名プレーヤー。 世界メジャー4大会のすべてでトップ10に入った実績がある。
将来的に様々なスキルを身につけられるよう、基礎を身につけさせて送り出している
▼これまでを振り返って
森稔さんと世界に出て活躍できる子を育てたいですねという話から始まりました。森ビルと静ヒルズCCのサポート体制と、何よりもサポーターズクラブメンバーの応援があったので全力で取り組めました。嬉しいことですし、ありがたいです。
▼卒業生が世界で活躍
僕らが教えているのは基礎だけ。サバイバル術というのか、その基礎をもとにしていろんなことを学習していけるようにして送り出しています。活躍している選手は後輩の励みにもなっているし、これからももっと活躍していく選手が卒業生の中から出てくると思うので、良い巡り合わせというか、流れというのができていると思います。
▼基礎とは?
ゴルフはもちろん打つ技術も必要ですが、それを支える体、それからその両方を統括する心が必要です。基礎というのは、分かりやすく説明すると、ひらがなを書けない人は漢字を書けないということ。まずはしっかりとしたひらがなを書こうということです。すぐに漢字、しかも崩した達筆な字を書きたいと思ってしまいがちです。でも子どもたちがまずやるべきことは、ひらがなが書けるようになること。そこを基礎として考えています。
トレーニングの基礎は何かというと走ること。それから跳ねたり、スクワットをしたり、こういうのが基礎ですよね。それから怪我をしない体を作るためのストレッチ、もちろん食事のことも取り入れたりします。
打つ技術の基礎は、正しく構えることと正しく始動すること。この2つをバランスよく行うことが、打つことに関しての基礎です。
心は、(ゴルフを)突き詰めよう、追求していこうということ。もっともっと上手になりたいという気持ちを持ち続けるということが心の基礎だと思います。遊ぶこともあれば、練習するときは練習するということだと、心の中に隙ができてしまいます。自分はゴルファーとしてもっともっと成長していくんだっていうことを常に思い続けているということが、心を豊かにしていくというか充実させていきます。
目からの情報も大事。手本となれるように自分も努力をしている
▼中嶋プロのアプローチを見て学んでいるという生徒も多いです
本当は大きなショットも見せたいんだけど、年齢的にもなかなか厳しいです。手本となれるのはショートゲームしかないので、できるだけいいものを見せたいなと考えていますし、その努力もしています。子どもたちへの言葉の伝達も大事なのですが、姿、打つ姿勢を見せること、目からの情報というのも大事にしてあげたい。自分が打って見せられるような今の状況を、保ちたいと思っています。
▼2023年にツアー初優勝を飾った小滝水音、蛭田みな美について
小滝は1期、2期、3期(2012~16年)とやってきましたが、努力家でしたし、トレーニングではなかなかついてこれなかったのですが脱落することなくずっと頑張っていました。彼女の独特なパッティングスタイルは昔からで、あれでいいのかと言う声もあるのですが、僕はこのままでいいんじゃないかと言っていました。あのスタンスの方が彼女は堂々と打てて、スタンスを変えたりすると打てなくなってしまう。そういう個性豊かな選手ですね。
蛭田は日本女子アマに勝って、トミーアカデミーに一番最初に自信をつけさせてくれました。蛭田たちの活躍を見て、後輩たちも勝ちたいと思っただろうし、畑岡のように海外に出ても活躍する子も出てきました。男子も河本力が勝ったり、杉原大河も優勝争いをするようになりました。女子も男子も楽しみな選手がたくさん出てきています。それがやっぱり後輩たちのいい目印というか指標になりますね。あとは海外のメジャーに勝つ選手が出てくれれば一番いいと思うし、そこを目指して頑張りたいです。
強くなるというのが一番の目標だが、みんなに好かれるゴルファーに育って欲しい
▼現役生でも隅内雅人選手など将来有望な選手がたくさんいます
そうですね。隅内にはすごく期待をしています。ナショナルチームに入っていますが、体を壊さないように、張り切って頑張り過ぎなければいいなと思います。やっぱり地道に足元を見ながら頑張って欲しい。小さい頃からずっとアカデミーでもやっているので、隅内には一段と期待はしちゃいますね。
▼トミーアカデミー生には将来どんなゴルファーになって欲しい?
もちろん強くなるというのが一番の目標ですが、ゴルファーとしての存在そのものがみんなに好かれるというか好感を持たれるそういうゴルファーになって欲しいですね。強く優しく、そしてたくましく、周りを癒してあげられるゴルファーになったら最高ですね。かなり先の話だと思いますが。
▼静ヒルズCCの魅力
常に進化していきますね。現状維持がないというか、練習場にしても、アプローチエリアにしても、コースのメンテナンスにしても、成長し続けています。より良いゴルフ場になっているというのがすごいなと思いますね。
▼静ヒルズCCでさらに良くしたいことは?
森ビルゴルフリゾート株式会社社長の多田野敬さんがアイデアマンだから、多田野さんに任せていれば間違いない方向に行くと思うし、多田野さんもアカデミーのことをすごく理解してくれています。そういう意味ではいろんな世代が静ヒルズCCには来ますが、その中でも若い世代が思い切ってゴルフに浸れるような、ゴルフの上達にはここが一番だよねって思えるようなコースづくりというのを多田野さんは考えているし、自分たちもそれを目指しています。
インタビュー後記
ヒルズゴルフトミーアカデミーの運営を行っている森ビルゴルフリゾート株式会社の林祐樹さんによると、「中嶋プロは、アカデミーで行う内容を常にアップデートしている」といいます。また、「指導は合宿の時だけでなく、中嶋プロが直接生徒に電話したり、時には個別に呼んで指導したり、様々なタイミングでそれぞれの生徒の状況に応じて丁寧に生徒のケアをしています」とのこと。中嶋プロは自身の経験に加えて、最新の情報を貪欲に取り入れていくことと生徒一人ひとりへの丁寧な指導で、トップゴルファーを次々と生み出しています。